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【週刊・読書北海道メール版】 復刊第84号(通巻215号) 2000/09/26発行
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=====【今週の目次】=========================================================
〔Colum:本と批評〕
1)月刊漫画時評15(阿部 幸弘)
新聞の一コマ・マンガはすでに死んだジャンルだ。
〔News:本の情報〕
2)新聞書評インデックス−2000年9月24日掲載分
3)今週のベストセラー−札幌市厚別区編
〔News:北海道の本と文化〕
4)新刊情報【北海道で出版された本・北海道の人が書いた本】
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〔Colum:本と批評〕
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●月刊漫画時評15(阿部 幸弘)
新聞の一コマ・マンガはすでに死んだジャンルだ。
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◆「マンガ」をめぐる混乱と誤解◆
個人的なことだが、札幌市教育委員会文化資料室さっぽろ文庫編集室の依頼で、原
稿を書いた。「さっぽろ文庫」というシリーズに、札幌のマンガを扱った一冊を作り
たいという編集側の意向だ。ところが、札幌や北海道にあやかる作品や作者を集めて
本を編むのは良いにしても、一コマ・マンガと手塚以降の戦後の日本マンガ(便宜上、
ストーリー・マンガとしておく)を、一緒に扱い、あげくTVアニメも“マンガ”と
して扱う考えもあるという。
おいおい。はっきり言って、マンガに対する理解が足らなすぎ。
一コマ・マンガとストーリー・マンガは区別して編集した方が良いことをアドバイ
スしたが、受け入れてはもらえなかった。
そこで私は、「一コマ・マンガとストーリー・マンガが、どうして性質を異にする
のかについて書くのならば引き受ける」として、一章書かせていただいた。マンガが
好きな人なら、イロハに属することではあるが、分からない人がまだまだいるのなら、
説明するのが私の役割のようにも思えたからだ。マンガ評論家を肩書きの一つとして
持っている者として…。
しかし、すでに定説となっていることを未だ理解できていない人に、改めて説明し
ようとする試みは存外難しいものだった。興味が湧いた方には、「さっぽろ文庫」の
本文を見ていただくとして、どうしてこのような混乱が起こっているのかについて、
作業を進める中でいくらか見えてきたので書いておこう。
大きく言うと、この混乱の理由は二つある。
一つは、[manga] と発音される表現メディアの歴史にある。「北斎漫画」に代表さ
れるように、浮世絵の時代からこの[manga] という言葉はあった。つまり、単純に言
って、[manga] と呼ばれる表現が歴史的に連綿と繋がっていることが、誤解の一つの
源なのだ。けれども実際は、発音が同じでも、その内実を時代ごとにつぎつぎに変え
て来たのが[manga] という言葉なのだ。(ちなみに、「北斎漫画」での“漫画”は、
漫歩とか漫遊などの単語の中の“漫”の意に近い。徒然なるままに描き落とした絵、
くらいの意味であろう。それが現代のマンガのルーツであるとするのは、いかにも強
引だ。)
もう一つの誤解の源は、我々の文化の側にある。おそらく、[manga]=(1)簡素な線
画表現+(2)滑稽味、という公式がある程度、我々の文化の中に居着いているのだ。だ
から、鳥羽僧正の「鳥獣戯画」など持ち出して、[manga] のルーツだなんて、頓珍漢
なことを言う奴がいる。
しかし、読者論とメディア論を考慮に入れれば、これらのことは一気に整理が付く。
表現とは、誰が誰に向かって、どのような媒体(表現手段)を用いて何を伝えたのか、
その総体である。現代日本のストーリー・マンガが、典型的な複製芸術に属するのは
言うまでもない。
そして、すでに日本のマンガは、簡素な線画ですらない。詳しく言えば、線画の発
展形の描写が今でも優勢なのはたしかだが、その表現のベクトルはむしろ“過剰”な
線画の方向を向いている。同時に、様々な作家の多様な試みの中で、線画とは異質な
描写もたくさん現れて来ている(特にコンピュータ・グラフィックスを用いた作品な
ど)。また、内容に関しては、滑稽などという斜に構えた感性を遥かに越えて、あり
とあらゆる人間の感情を扱っていることは、ここで説明するまでもないだろう。
◆新聞一コマ・マンガというゾンビ◆
それでも尚、「一コマ・マンガこそが本物のマンガだ」などと、どこかでうそぶい
ている人が居るらしい。愚の骨頂である。正確には、「一コマ・マンガこそが本物の
一コマ・マンガであり、その他にも似た名前のまるで別な表現がある」だけだ。
ただ、私は、一コマ・マンガという表現形態の可能性を否定するつもりは毛頭ない。
正直に言って浅学で、良い作品、良い作家というのをあまり知らないけれども、広く
世界を探せば良質な一コマ・マンガはあるのだろう。
しかし、一コマ・マンガを愛する人にこそ、これだけは言っておきたい。今、平均
的な日本人が普通に体験する一コマ・マンガ(新聞、雑誌など)を読んで、感動した
経験のある人は、おそらくほとんど皆無になっており、それは読み手の責任ではなく、
作品の質のせいだろうということだ。特に新聞の一コマ・マンガの劣悪さは20年以上
前から指摘されていたが、状況は何も変わっていない。感動するどころかむしろ、作
家の感性の根腐れ具合にうんざりさせられることの方が多い。
ところで、一コマ・マンガを鑑賞し、味わい、楽しみ、感動するには、常識の共有
という大きなバック・ボーンが要る。これは本当は、どんな表現にもあてはまること
だが、簡素な線の少ない情報量で、なにがしかの感動や風刺を盛り込もうとすれば、
読者との日常の情報(=常識)が共有されていればいるほど、話が早いのは確かだ。
たとえば、昔の新聞の一コマ・マンガなど、当時の事件のことを知らなければ意味も
分からない。
しかし、実はここに時に表現が陥ってしまう陥穽もある。一コマ・マンガに詳しい
清水勲の『マンガ誕生 大正デモクラシーからの出発』(吉川弘文館 1999)は、明
治〜大正期の一コマ・マンガの歴史に詳しいが、政治風刺の漫画紙『東京パック』の
表紙を分析した章がある。この中で、明治44年6月10日号の表紙が紹介されている。
北沢楽天の描いた、美しい女性の横顔だ。隅には、「処女!!! それが女の最も権
威あるものである」と書いてある。清水によると、この背景には、「婦人運動、女権
獲得運動」があり、それが「社会の中で目立つようになって、その特集号が生まれた」
ということである。
どうだろう。フェミニズムの立場で明治時代の(一コマ)漫画家の感性を批判する
こともできるだろうが、それよりも、当時このような政治風刺の新聞を読む者たちの
“常識”というものが、女性の人権に関してはこのような水準にあったことが良く分
かる事実ではないだろうか。もちろん、著者・清水は「近代漫画の女性像」という一
章を割いて、この問題を考察しているが、風刺というものがどのような場合、表現と
して醜悪な姿を晒してしまうのか、良く分かる例だと思う。
自分の立っている、その常識こそを疑う目を持てなくなった時、表現は単なるプロ
パガンダや、差別的な価値観の押しつけになる。そう考えると、新聞の一コマ・マン
ガが、すでに腐臭を発しながら未だ死なないゾンビ状態になっているのも分かるとい
うものだ。新聞にぎりぎり載るか載らないか、常識に挑戦するようなビビッドな意識
をはらんだ作品は、私はついぞ見たことがない。どの作品も、これまでのスタイルを
踏襲するばかりで、何のスリルも感じられない。私はそう思う。だから私にとっては、
新聞の一コマ・マンガはすでに死んだジャンルだ。「いや、違う」と反論する人が居
るなら、ぜひ、私の意見を覆すような、作品の実例を見せてほしい。
一コマ・マンガ再生の道があるなら、それは今までの一コマ・マンガのあり方に、
全くとらわれない所から始まるだろう。すでにその兆しは、現代美術の世界から現れ
てきているのだが、それは別な話なのでここでは筆を置く。ゾンビは早く墓の中で静
かに眠らせてあげたいものだ。
☆筆者の阿部幸弘(あべ ゆきひろ)氏はマンガ評論家、精神科医。現在、『鳩よ!』
にコラムを連載しているほか『ガロ』『ユリイカ』『週刊読書人』『北海道新聞』な
ど多くの雑誌、新聞にマンガ評論を執筆している。
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〔News:本の情報〕
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▼新聞書評インデックス (2000年9月24日掲載分)
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○北海道新聞○
ルオン・ウン著『最初に父が殺された』(無名舎)−評者・清水俊弘
東谷暁著『金融庁が中小企業をつぶす』(草思社)−評者・斎藤一朗
東菜奈著『風を待つ少年』(集英社)−評者・中川素子
連城三紀彦著『秘花』(東京新聞出版局)−評者・清原康正
米本昌平ほか著『優生学と人間社会』(講談社現代新書)−評者・大林雅之
○朝日新聞○
坪内祐三編『明治文学遊学案内』(筑摩書房)−評者・久世光彦
エリック・マコーマック著『隠し部屋を査察して』(東京創元社)−評者・川上弘美
ランス・アームストロング著『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』(講談社)−評
者・中川謙
ジェフリー・ディヴァー著『悪魔の涙』(文春文庫)−評者・北上次郎
東谷暁著『金融庁が中小企業をつぶす』(草思社)−評者・真渕勝
北澤憲昭著『境界の美術史』(ブリュッケ、星雲社発売)−評者・黒田日出男
○日本経済新聞○
アラン・コルバンほか著『レジャーの誕生』(藤原書店)−評者・山田登世子
村上龍著『希望の国のエクソダス』(文藝春秋)−評者・山城むつみ
岡田康博著『遥かなる縄文の声』(NHKブックス)−評者・小林達雄
マイケル・アイズナー著『ディズニー・ドリームの発想』上下(徳間書店)−評者・
水野裕司
ロ−リー・B・アンドルーズ著『ヒト・クローン無法地帯』(紀伊國屋書店)−評者
・池田清彦
○毎日新聞○
舟橋洋一著『あえて英語公用語論』(文春新書)−評者・五百旗頭真
高橋敏著『国定忠次』(岩波新書)−評者・渡辺保
西野嘉章著『装釘考』(玄風舎、青木書店発売)−評者・清水徹
小川関次郎著『ある軍法務官の日記』(みすず書房)−評者・山内昌之
向井敏著『司馬遼太郎の歳月』(文藝春秋)−評者・張競
佐藤正之ほか著『静脈ビジネス』(日本評論社)−評者・伊東光晴
○読売新聞○
アラン・コルバンほか著『レジャーの誕生』(藤原書店)−評者・山本博文
劉傑著『漢奸裁判』(中公新書)−評者・丹藤佳紀
タキエ・スギヤマ・リブラ著『近代日本の上流階級』(世界思想社)−評者・猪木武
徳
花なつ子著『アジア的生活』(講談社文庫)−評者・関川夏央
伊藤比呂美著『伊藤ふきげん製作所』(毎日新聞社)−評者・高橋源一郎
斎藤孝著『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス)−評者・上田紀行
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▼今週のベストセラー ◇紀伊國屋書店厚別店(2000年9月18日〜24日)調べ◇
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1 J・K・ローリング著『ハリ−・ポッタ−と秘密の部屋』(静山社)1900円
2 J・K・ローリング著『ハリ−・ポッタ−と賢者の石』(静山社)1900円
3 『DRAGON QUEST 7』(集英社)952円
4 『遊・戯・王デュエルモンスタ−ズ3』下巻(集英社)619円
5 大川隆法著『太陽の法』(幸福の科学出版)2000円
6 『いきなり!黄金伝説。超節約レシピ50』(テレビ朝日事業局出版部)750円
7 『ウエルカム北海道 2000−2001年版 秋』(リクルート北海道じゃらん)648円
8 『ペルソナ2 罰公式ガイドブック完全版』(アトラス)1300円
9 阿川佐和子ほか著『ああ言えばこう嫁(X)行く』(集英社)1500円
10 渡辺健一著『星の王子さまの幸福論』(扶桑社)1238円
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〔News:北海道の本と文化〕
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★新刊情報 2000年8月1日〜31日確認分(詩集・歌集・句集を除く)
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【北海道で出版された本】
▽北海道新聞社(011-210-5742)
・梅沢俊ほか著『増補改訂・北海道夏山ガイド2 表大雪の山々』2200円
・山崎達郎著『すすきのバーテンダー物語』1600円
・中村淳一著『『北のヘラブナ釣り入門』2200円
▽北海道大学図書刊行会(011-747-2308)
・山口二郎編・北大法学部ライブラリー5『自治と政策』4800円
▽共同文化社(011-251-8078)
・神埜努著『宇野千代の札幌時代 女流作家の誕生』2100円
▽リクルート北海道じゃらん(011-219-2514)
・北海道じゃらん編集部編『じゃらんDEマル得グルメ北海道2000−2001年版 全1500
店』838円
▽アクセス(0138-53-6089)
・アクセス編『函館ウォーカーズマニュアル Vol6』900円
▽樽前頑固堂(0144-71-7871)
・三浦二郎著『野鳥観察ガイド』600円
▽札幌市芸術文化財団(011-271-5821)
・教育文化会館事業部編『札幌芸術文化年鑑 2000年版』2200円
▽自費出版
・高橋ひで子著『香舟庵つれづれ』非売品
【北海道の人が書いた本・関連する本】
・萱野茂著『アイヌ歳時記』平凡社新書、700円
・田端宏ほか監修『アイヌ民族の歴史と文化 学習指導の手引』山川出版社、1300円
・桃谷方子著『青空』講談社、1600円
・熊谷哲也著『ウエンカムイの爪』集英社文庫、400円
・渋沢和樹著『狼の果実』講談社、1800円
・種村直樹著『「銀づくし」乗り継ぎ旅』徳間書店、1400円
・合田一道著『検証・満州一九四五年夏 満蒙開拓団の終焉』扶桑社、1429円
・島村英紀著『地震は妖怪 騙された学者たち』講談社アルファ新書、780円
・工藤岳著『大雪山のお花畑が語ること 高山植物と雪渓の生態学』京都大学学術出
版会、2100円
・兼本延男著『津別峠の四季 阿寒・知床・大雪のパノラマ』東方出版、2000円
・寺沢浩一著『日常生活の法医学』岩波新書、660円
・小坂洋右著『日本人狩り 米ソ情報戦がスパイにした男たち』新潮社、1800円
・テッサ・モーリス=鈴木著『辺境から眺める』みすず書房、3000円
・荒井碧著『吼えよ御陣乗 奥能登海民行状記』郁朋社、1500円
・北海道のエコツーリズムを考える会編『北海道ネイチャーツアーガイド』山と渓谷
社、1500円
・北倉公彦著『北海道酪農の発展と公的投資』筑波書房、3800円
・大森理恵ほか編『まなざし 盲目の俳句・短歌集』メタ・ブレーン、2200円
・Z・ソルビアン著、高橋庸哉ほか訳『ワクワク実験 気象学』丸善、2800円
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