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【週刊・読書北海道メール版】 復刊第70号(通巻201号) 2000/05/30発行
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=====【今週の目次】=========================================================
〔Colum:本と批評〕
1)月刊漫画時評12(阿部 幸弘)
古屋兎丸『Garden(ガーデン)』(イースト・プレス、1111円)
〔News:本の情報〕
2)新聞書評インデックス−2000年5月28日掲載分
3)今週のベストセラー−札幌市厚別区編
〔News:北海道の本と文化〕
4)新刊情報【北海道で出版された本・北海道の人が書いた本】
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〔Colum:本と批評〕
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●月刊漫画時評12(阿部 幸弘) マンガはひ弱なアートではない。
古屋兎丸『Garden(ガーデン)』(イースト・プレス、1111円)
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◆必然的としてのマンガ表現と描写◆
今回は、古屋兎丸の新刊『Garden(ガーデン)』(イースト・プレス、1111円)を
紹介したい。ただ、別な場所でもこの作品を採り上げているから(よろしかったら、
来月出る『鳩よ!』をごらんください)、ここでは、せっかく読書北海道という場所
なので、少しローカルな個人的な事情をからめてちょっと違った角度から書いてみた
い。
というのも実は、15年間続けた週刊マンガ評の連載が終わったからだ。ご存じの方
も居るかと思うが、北海道新聞夕刊の別刷り「おふたいむ」に長らく書かせていただ
いていた。10年以上にも渡る連載となれば、それがたとえ短文のコラム一本であろう
とも、書き手の生活の中にそれなりの場所を占めてしまうものだ。週刊というのはそ
ういうペースだろう。それにしても、マンガというジャンルの底知れないたくましさ
と、ルーツに在る、飛び込むのを躊躇するほどの混沌、それらから私はどれほどパワ
ーをもらったことだろう。今は私にとって、そういう思いを少々反芻する時期のよう
だ。
ただ、私は今でもマンガに詳しいマンガ評論家ではない。資質としてコレクターに
はなれないし、歴史や資料の押さえは(時にはそれこそが)大事なのは分かってはい
るが、自分の本来の興味の部分ではないというのが正直なところだ。非常に勝手かも
しれないが、結局私が興味を持って紹介してきたのは、大なり小なり自分の視野を広
げてくれる作品だったように思う。いきおい作業の本質が、とても個人的なものにな
っていたとしても不思議ではない。
だからかもしれないが、長く続いた週刊連載が終わる前後に、私個人にとってとて
も象徴的な出来事があった。ここで紹介しようとしている作品、古屋兎丸の『ガーデ
ン』が、編集側の意向に沿わないとコメントされ、結局紹介できなかったのだ。私個
人はこの作品を、「10年に一度のレベルの傑作短編集」と確信していたので、カクン
と関節を外されるような驚きを味わった。もちろん、編集側の意図は、書き手・読み
手とはまた別にあって当然だし、なければならない。ただ、道新のコラムでは長きに
渡ってかなり自由に作品を選定させてくれたので、「編集側がこれだけ水準の高い作
品の紹介に難色を示すはずがない」と、勝手に早合点していたのだ。
そう。水準の高さという意味では、例えば林静一の『ph4.5グッピーは死なな
い』を思い出す。この作品もある意味非常にセンセーショナルで、男女の密会のシー
ンでは、裏ビデオも真っ青なくらいの性器の“どアップ”が延々と続くのに驚かされ
た。それでも道新は、この作品の紹介を初出時と改訂版が出た時の二度許してくれた。
詳述は避けるが、すべてが平板になっていく我々の時代のリアリティーを、マンガと
して結実させた傑作である。
こんな風に、時代の先端にある作品は、時に過激な姿を取ることがある。もちろん
それは、マンガに限った話ではない。けれども評論の立場から見れば、林静一のスキ
ャンダラスなポルノ描写も、あえて必要な素材だったのが分かる。そして、古屋兎丸
が今回の作品の中でやろうとしたことも、マンガ表現を切り拓くためには必要な作業
であるように、私には思える。より正確には、スキャンダラスである事が必要なので
はなく、時代と切り結ぶ中で必然的にスキャンダラスな描写を生んでしまう作品とい
うものがあるということだ。
◆時代が共有するリアリティー◆
おそらく、新聞紹介や書店での流通の時に問題とされる可能性があるのは、この短
編集のラストに収録されている「エミちゃん」だろう。この中に描かれた、まさに渾
身の暴力表現は、実際、読んでいて痛くなるほどこちらの生理に触れてくる。内容も、
森をさまよう主人公・少女エミが、偶然、幼女大量殺人の現場に出くわし、犯人のお
たく風な青年に無惨に殺されてしまうという、いかにも世間が忌み嫌いそうなものだ。
だが、何故このようなテーマを敢えて描かねば、あるいは、好き好んで読まねばな
らないのだろう? もちろん読まない権利もある。それを認めた上で、私には二つ理
由が思い浮かぶ。
一つは、まさしく時代の要請するものだ。日々の事件を追うまでもなく、無差別で
必然性のない暴力にさらされている日常こそが、我々の共有するリアリティーではな
いだろうか。そのような暴力は、本当は有史以前から我々の社会にあったはずだが、
現代はそれが遍在するようになったとも言える(これは、共同体のあり方の変化とか
らむ問題のはずだ)。少なくとも、無差別で理不尽な暴力の圧倒的な存在に、多くの
人が常日頃から気付かされる状況がある。ここで、作品の中になにほどかリアルなも
のを込めたいという書き手、またそれを求める読み手が居れば、表現の場は成り立つ。
そう考えれば、「エミちゃん」はまさに時代の暴力性を真っ正面から捉えようとした
作品だと分かる。人類を破滅させるほどの激しい憎悪と暴力を持っていたのは、実は
一見無力そうなエミちゃんの方だったという、ラストの急展開にも息をのむ。
二つめの理由は、作者自身のものだ。絵画から出発してマンガに入った古屋にとっ
て、マンガの技術は意識的に取り込むべきものだったと言える。実験的なパロディ・
4コマ作品「palepoli(パレポリ)」で、マンガの図像の持つ記号性を徹底的に遊ん
だ彼は、今回、物語をたたみかけるマンガ独特のリズムを自らの血肉にするため、一
度やみくもに突っ走る必要があった。フリー・インプロビゼーションのように、強引
に物語を前へ前へと押し進めるためには、自らの感性に突き刺さってくる激しいテー
マを必要としただろう。ただ、それが時代の抱えるテーマと重ねて描けたことが、彼
の天才的な部分だ。
個人的にこれほど思い入れがあったにも関わらず、自分の書くコラムで紹介記事を
書けなかったのは正直悔しい。しかし、このことは、私自身の変化やマンガ表現の水
準の変化によって、必然的にもたらされた結果と考えることもできる。少なくとも、
編集側の意図に沿ってある程度自分をコントロールする書き方ではなく、自らの素直
な興味に沿って書きたいことを選んでいくのならば、今後は、書ける場所も探さねば
ならないということになる。
しかし、マンガの表現がとっくにお茶の間をはみ出しているのは、改めて言うまで
もないことだ。ちなみに、マンガに限らず表現全般が、近年、お茶の間(=建て前と
しての共同体)をどんどんはみ出して行っているように思えるのは、私だけではない
だろう。
マンガはひ弱なアートではない。ページをめくられ読み捨てられる大量消費のサイ
クルの中にすっぽりとハマリつつも、ある時はハリウッド映画以上のスペクタクルを、
作家のイマジネーションとペン先の修練だけという、“超”の付くローコストで生産
してきた。またある時は、社会システムの表面には決して浮かび上がりようのない孤
立した、しかし個人で抱えるにはあまりにも濃厚な妄想を、こっそりと、だが確実に
流通させてもきた。そして、これからどこへ向かっていくのか? 私個人にそんなこ
とが分かるはずもないが、例えばここに、古屋兎丸の描いた素晴らしい作品集がある
ということが、私にとっての取りあえずの事実である。
☆筆者の阿部幸弘(あべ ゆきひろ)氏はマンガ評論家、精神科医。現在、『鳩よ!』
にコラムを連載しているほか『ガロ』『ユリイカ』『週刊読書人』『北海道新聞』な
ど多くの雑誌、新聞にマンガ評論を執筆している。
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〔News:本の情報〕
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▼新聞書評インデックス (2000年5月28日掲載分)
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○北海道新聞○
笙野頼子著『てんたまおや知らズどっぺるげんげる』(講談社)−評者・角田光代
ポール・プリッチャード編『ホルニストという仕事』(春秋社)−評者・谷口静司
柳澤桂子著『ふたたびの生』(草思社)−評者・柿川鮎子
野本寛一著『庶民列伝』(白水社)−評者・菅豊
中村真一郎著『木村蒹葭堂のサロン』(新潮社)−評者・野口武彦
○朝日新聞○
野本寛一著『庶民列伝』(白水社)−評者・松山巌
小林信彦著『おかしな男 渥美清』(新潮社)−評者・中野翠
金井美恵子著『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』(朝日新聞社)
−評者・斎藤美奈子
高橋団吉著『新幹線をつくった男 島秀雄物語』(小学館)−評者・太田弘子
堀江敏幸著『子午線を求めて』(思潮社)−評者・清水良典
佐伯彰一著『作家の手紙をのぞき読む』(講談社)−評者・木田元
○日本経済新聞○
丸山勝著『陳水扁の時代』(藤原書店)−評者・伊藤潔
小林信彦著『おかしな男 渥美清』(新潮社)−評者・矢野誠一
中野美代子著『西遊記』(岩波新書)−評者・田中優子
榊原英資著『日本と世界が震えた日』(中央公論新社)−評者・小島明
長坂寿久著『オランダモデル』(日本経済新聞社)−評者・橘木俊詔
○毎日新聞○
小森陽一著『小森陽一、ニホン語に出会う』(大修館書店)−評者・小西聖子
村上龍著『共生虫』(講談社)−評者・三浦雅士
ドウス昌代著『イサム・ノグチ』上下(講談社)−評者・藤森照信
上尾信也著『音楽のヨーロッパ史』(講談社現代新書)−評者・樺山紘一
坂元一哉著『日米同盟の絆』(有斐閣)−評者・五百旗頭誠
片桐頼継ほか著『よみがえる最後の晩餐』(NHK出版)−評者・日高晋
○読売新聞○
猪木正道著『私の二十世紀』(世界思想社)−評者・橋本五郎
『岡本太郎の本』全5巻(みすず書房)−評者・木下直之
ベルンハルト・シュリンク著『朗読者』(新潮社)−評者・養老孟司
池上英子著『名誉と順応』(NTT出版)−評者・山本博文
トッド・マッカーシー著『ハワード・ホークス』(フィルムアート社)−評者・城戸
朱理
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▼今週のベストセラー ◇紀伊國屋書店厚別店(2000年5月22日〜28日)調べ◇
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1 大川隆法著『太陽の法』(幸福の科学出版)2000円
2 『モーニング娘。を追いかけろ』(メディアファクトリー)980円
3 大平光代著『だから、あなたも生きぬいて』(講談社)1400円
4 北海道新聞社編『パークゴルフ全ガイド2000』(北海道新聞社)857円
5 大橋巨泉著『巨泉 人生の選択』(講談社)1500円
6 北海道新聞社編『有珠山噴火』(北海道新聞社)600円
7 『Mrs.Living No.9』(主婦と生活社)950円
8 乙武洋匡著『乙武レポート』(講談社)1500円
9 立花隆著『脳を鍛える』(新潮社)1600円
10 『漢字ワンダーランド2000 Vol.8』(リイド社)457円
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〔News:北海道の本と文化〕
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★新刊情報 2000年4月1日〜30日確認分(詩集・歌集・句集を除く)
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【北海道で出版された本】
▽北海道新聞社(011-210-5742)
・北海道北方博物館交流協会編『20世紀 夜明けの沿海州』2500円
・北の生活文庫企画編集会議編・北の生活文庫10『北海道の生活文化』1553円
・地家光二著・ミュージアム新書20『居串佳一』1000円
▽北海道大学図書刊行会(011-747-2308)
・渡辺康之著『ウスバキチョウ』15000円
▽北海道出版企画センター(011-737-1755)
・鈴木トミエ編著『かもめの便り 証言篇・史料篇』全2冊、4500円
▽北海道テレビ放送(011-821-4411)
・濱中貴満ほか編『グルメだDon! 2000年春号』191円
▽共同文化社(011-251-8078)
・鈴木トミエ編著『小平百話−記憶の中の物語』2200円
▽中西出版(011-785-0737)
・早川禎治著『傷ついた自然の側から−手稲山紀行』1500円
▽ギミック(011-671-6636)
・ライズ編集室編『北海道キャンピングガイド2000』1715円
▽緑鯨社(0154-46-3376)
・宮脇惇子著『主婦日和』1200円
▽メディカルプランニング(011-232-7071)
・鷲見博和著『東に灯はともる−根室病院の百年』2381円
▽旭図書刊行センター(011-666-4040)
・大久保一良著『北海道のストーブに関する記録−安政3年から明治20年まで』非売
品
▽旭川振興公社(0166-22-7198)
・豊田實大著・旭川叢書26『あさひかわの川』1905円
▽江別市・江別市教育委員会(011-382-4141)
・中村齋著・叢書江別に生きる9『青年学校物語』1714円
▽釧路短期大学生涯教育センター(0154-41-0131)
・橋本勲著・標茶町の歴史9『標茶酪農の歴史考・上』非売品
・三晒達夫著・標茶町の歴史10『釧路集治監の人たち』非売品
▽北海道林業改良普及協会(011-611-4972)
・道立林業試験場監修『森で学ぶ−森林教育プログラム作成の手引き』2857円
▽自費出版
小山邑一郎著『釜たき丈吉』非売品
【北海道の人が書いた本・関連する本】
・御手洗昭治著『異文化にみる非言語コミュニケーション』ゆまに書房、1500円
・金子隆一著『おじいちゃんの北海道中記』文芸社、1500円
・札幌わんぱく探偵団編『子どもとでかける札幌あそび場ガイド』メイツ出版、1460
円
・谷地元雄一著『これが絵本の底ぢから』福音館書店、1680円
・中野美代子著『西遊記−トリック・ワールド探訪』岩波新書、700円
・鷲田小彌太著『時間をぜいたくに使う技術』双葉社、1400円
・林謙作ほか編『縄文遺跡の復原』学生社、2200円
・三松正夫著『昭和新山物語』誠文堂新光社、1200円
・大和田智枝子著『白い旅人−白鳥の詩』文一総合出版、3800円
・鷲田小彌太著『人生くねくね道の歩き方』サンマーク出版、1600円
・中村哲夫著『西洋館−明治・大正の建築散歩』淡交社、2800円
・黒部亨著『高田屋嘉兵衛』神戸新聞総合出版センター、1800円
・鷲田小彌太著『苦手な人間関係がラクになる』海竜社、1400円
・山田秀三著・アイヌ語地名の研究別巻『北海道の地名』草風館、6000円
・梅沢俊著・ヤマケイアルペンガイド1『北海道の山』山と渓谷社、1800円
・三和裕佶ほか著・北海道の山1『道北・道東・大雪』東京新聞出版局、1100円
・三和裕佶ほか著・北海道の山2『道央・道南・日高』東京新聞出版局、1100円
・長谷川毅著『北方領土と日露関係』筑摩書房、5800円
・鷲田小彌太著『まだまだ役立つ思想入門』大和書房、1400円
・田中彰著・日本の歴史7『明治維新』岩波ジュニア新書、740円
・平倫子著『ルイス・キャロルの図像学』英宝社、3200円
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