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【週刊・読書北海道メール版】 復刊第64号(通巻195号) 2000/04/04発行
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<お知らせ>
来週4月11日は発行を休ませていただきます。ご了承下さい。(編集部)
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=====【今週の目次】=========================================================
〔Colum:本と批評〕
1)走り読み〈北海道〉の〈文学〉11(平原 一良)
山口昌男『敗者学のすすめ』(平凡社、2000円)ほか
〔News:本の情報〕
2)新聞書評インデックス−2000年4月2日掲載分
3)今週のベストセラー−旭川市編
〔Colum:北海道の本と文化〕
4)北海道出版史稿 昭和・戦後篇1(出村 文理) 戦後占領期の出版ブーム
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〔Colum:本と批評〕
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●走り読み〈北海道〉の〈文学〉11(平原 一良)
山口昌男著『敗者学のすすめ』(平凡社、2000円)を読む
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◇遡及的読書の楽しみ◇
先行する大冊2著、すなわち『「挫折」の昭和史』(岩波書店、4200円)と『「敗
者」の精神史』(同、4800円)がそれぞれ刊行されたのは5年前の1995年の3月と7
月のことで、当時筆者はすぐに購入しようと思い定めながら、前者については確か1
年ほど、後者については5〜6か月ほど買い控えを余儀なくされたことが思い出され
る。1995年は北海道立文学館がオープン(9月)した年で、その4月からスタッフの
一員として文学館の末席に加わった筆者には、経済的な余裕が全くなく(身分も給与
保障も入館を促された時期の話とまるで違っていたためで、この間のエピソードはい
ずれまとめるつもりだが)、兵糧の尽きかけることが予想されたため、それまで月々
50冊は購入していた図書・雑誌を5冊程度に抑えざるを得なかったためだ。読みたい
本を買えず、よしんば購入できたとしてもじっくりページを繰る時間的余裕がないこ
とは結構辛いものである。
ともかく、この2著は、書店に足を運ぶたびに、まなかいをかすめるばかりで、そ
のうち書店の棚から姿を消してしまった。のち、前者は1年以上たってから注文して
取り寄せたが既に7刷、後者は運よく近所の1/2BOOKSで購入できたのだった。刊行順
にではなく、後に出た『「敗者」の精神史』を先に買うことになった記憶、特に1/2B
OOKSで求めた記憶は鮮明に残っている。そして、この2著とも、当時は熟読できず、
拾い読みをする程度でお茶をにごし、『知の遠近法』(岩波書店、1978年)など数冊
の山口昌男の著書とともにわが賤が伏屋ならぬマンションの書架に眠ることになった
のである。
さて、『敗者学のすすめ』である。カギカッコで括られた「敗者」からカギカッコ
なしの裸の敗者になっていることには、なにがしかの著者の思いがこもっているので
あろうが、今それは問わない。ただし、私見では、ここに来て、「敗者」から敗者へ
の推移によって、敗者もようやく市民権を得ることができ、そして敗者学なる一見奇
態な「学」が山口昌男によってもたらされることで、「学界」(古いカテゴリーで言
えば、文科系のそれ)の常識に流動化が生じつつあるのか、とは思う。
この『敗者学のすすめ』には、先の2著刊行を境とするおよそ10年間の著者の歴史
的・文化的・学問的関心がどの範囲にあったかをうかがうに足る雑多な(あえてそう
言うのだが)文章が、井上ひさしとの対談(親子は最初のネットワーク)や牧野立雄
のインタビュー(宮沢賢治の祝祭空間)などとともに収められている。書評、講演録
をも含む、いわば雑録、雑纂と呼んでよい書物なのだが、凡百の雑録類とは異なり、
ていねいな脚注が人物・資料写真とともに付され、なおかつ巻末に 800項目を超える
人名索引も付されている点で、 400ページ弱の本書の税別2000円はいかにも安いと思
う。
発行元・平凡社の、と言うより、編集者である川村伸秀の苦労はおそらく並大抵の
ことではなかったであろうが、著者と編集者との幸福な関係が反映された好著として
『敗者学のすすめ』を筆者は記憶にとどめておきたい。書物は、やはりコラボレーシ
ョンの産物なのだ。
いつかもこの欄で強調したと記憶するが、手柄の一はもとより著者に属するとして、
一冊の本の誕生が祝福に値する結果を生むか否かは、やはり編集者の手腕に負うとこ
ろが大なのであって、三流の物書きは、この点を忘れてしまいがちであるし、読者も
またその点を忘れて著者のみをひたすらに崇拝するという愚を犯しがちなのである。
粗雑な文章が編集者の大鉈によって原形をとどめないほど直される例は枚挙にいとま
がない。『敗者学のすすめ』に触発されての、これは蛇足である。
◇「外史」に潜む変革のパワー
◇
さて、著者・山口昌男のライトモティーフは、本書中の一節「敗者の歴史に学べ」
に明らかに示されている。例えば、「戦後日本の社会は敗けた人間のもつ可能性とい
うものを、まだ何も追求していないんじゃないかと思う」と著者は述べている。もと
より、先の『「敗者」の精神史』で取り上げられた人物の多くが、「戦後」に限らず
明治・大正期日本のユニークな「敗者」たちであったように、著者の追求する「敗け
た人間のもつ可能性」は、近代日本の時空間に広く深く潜むそれである。さらに「薩
長型のピラミッド型社会からネットワーク型社会への転換をはかるべきとき」として
「今」を定位する山口昌男のフットワークが、書物の中にとどまらず、現在の札幌大
学学長をも「兼務」(と筆者の目には映る)しつつ、北のこの地の文化状況攪拌へと
つながるアクチュアルな意図を含む性格を備えていることは言うまでもないことだろ
う。
「正史」の孕む虚偽意識を頼むのではなく、「外史」に潜む変革のパワーを信頼す
るということなのであろう。『レイテ戦記』の大岡昇平への信頼を表明する著者の姿
勢が『敗者学のすすめ』全編に貫流しているからこそ、一読した人、とりわけ勝者な
らざる者としてみずからを認識する人は、ある種の自己救済へとつながる満足感を、
読書の快楽とともに手に入れることができるのである。
索引に名を連ねる 800余人の有名無名の人々への親疎の情を確認しながら、先の2
著『「挫折」の昭和史』と『「敗者」の精神史』へ、さらには『知の自由人たち』(
NHKライブラリー、1020円)などへと遡及して、あらためて読むことの快楽が得ら
れるのであれば、5年前に唖然としたローカル・スタンダードの無惨な有様も一部は
許せるさ、という想いが残ったしだい。
◇キュレーターシップをめぐる雑談◇
過日、先の著者・山口昌男さん(ここからは敬称を付けて呼ぶ)を原稿催促のため
訪ねた。まだ執筆中であったため、30分ほどそばで待ち、脱稿分を受け取り、急いで
一読、いくつかポイントをチェックし回答を得てから、キュレーターシップについて
話をした。「ギャラリー学長室」運営についてあれこれ語るなかで派生して及んだ話
題がそれであった。
小規模とはいえ、大学の学長室を開放してギャラリーにしてしまった山口さんのこ
とは、新聞はじめメディアのニュースネタにもなったことだが、それが奇抜で独創的
であるとしてメディアの人々が注目し、紹介するまではよかったものの、その後のフ
ォローに欠けているとは筆者も思っていたことだ。迫力満点で知られる井上有一の書
による宮澤賢治の「なめとこ山の熊」などが展示されても、その書の展示されること
の意味を知ってか知らでか、大方は拱手傍観、お義理の記事でつとめを果たしたかの
ように済ませてしまうことは、褒められたことではない。要は、決定的に好奇心を欠
いているのではあるまいか。
ヨーロッパの美術館などの例を持ち出すまでもなく、キュレーターシップについて
言えば、日本の、なかんずく北海道のそれはあまりにもお寒い現状にある。なりゆき
で、キュレーター(学芸員というといかにもお寒い感がある)になって6年目を迎え
る筆者は、日頃からなんで戦後まもないころに施行された古色蒼然たる博物館法(一
部改正されたとはいえ)に縛られ、つまらぬ文書主義に振り回されて、肝心の「学芸」
の仕事の内実や多くのキュレーターの資質・識見の向上が図られないままで来ている
のか、いまだに疑問だらけなのだが、これは、文化が経済社会の根幹に位置づくとい
う認識などもてないまま人への投資を惜しんできた政治と、官依存体質を改めきれな
い社会の、それぞれの責任であるから、言うだけ野暮なのであろう。
山口さんは、たとい素人である学生たちに対してであっても、ギャラリーにかかわ
ってもらう限りは、必要なキュレーターシップを学んでほしいのだ、と言っていたが、
そのとおりだと思う。単なる「おまつり」や「宣伝」のためにのみ、反対を押し切っ
て学長室を開放したのではない、という教育的な信念が言外に感じられた。
わが文学館でも、事情はさして変わらない。来る29日(土)からは特別企画展「挿
絵と装幀の小宇宙」が始まる(7月2日まで)。夢二、志功、竣介、剛一、澄生など
の成果が生きる構成を、とつくづく思う。声高らかに「おいでませ」と言えるかどう
か。
☆平原一良(ひらはら・かずよし)氏は『credo』 編集人。大学卒業後上京し、書籍
編集、美術館図録編集などを続け、1988年に帰道。短大講師を経て、現在北海道文学
館勤務。戦後詩等についての論考があるほか絵本の文も書く。
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〔News:本の情報〕
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▼新聞書評インデックス(2000年4月2日掲載分)
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○北海道新聞○
角田光代著『地上八階の海』(新潮社)−評者・佐藤亜有子
飯田操著『川とイギリス人』(平凡社)−評者・内藤耕
里見真三著『賢者の食欲』(文藝春秋)−評者・柴口育子
吉永みち子著『性同一性障害』(集英社新書)−評者・蔦森樹
ジュセッペ・アヤーラほか著『マフィアとの死闘』(NHK出版)−評者・川成洋
○朝日新聞○
永井均著『マンガは哲学する』(講談社)−評者・川上弘美
メルヴィン・バージェス著『ダンデライオン』(東京創元社)−評者・北上次郎
木村政雄著『笑いの経済学』(集英社新書)−評者・山崎浩一
後藤謙次著『竹下政権・五七六日』(行研)−評者・北岡伸一
西川伸一著『しらぜざる官庁・内閣法制局』(五月書房)−評者・真渕勝
ロバート・ゴダード著『一瞬の光のなかで』(扶桑社)−評者・河谷史夫
○日本経済新聞○
柳田邦男著『脳治療革命の朝』(文藝春秋)−評者・後藤正治
関口和一著『パソコン革命の旗手たち』(日本経済新聞社)−評者・坂村健
アンジェラ・カーター著『シンデレラあるいは母親の霊魂』(筑摩書房)−評者・巽
孝之
平川祐弘著『ダンテの地獄を読む』(河出書房新社)−評者・河島英昭
青木昌彦ほか編著『転換期の東アジアと日本企業』(東洋経済新報社)−評者・藤村
幸義
○毎日新聞○
谷川俊太郎ほか編『武満徹著作集』1(新潮社)−評者・三浦雅士
池澤夏樹著『旅をした人』(スイッチ・パブリッシング)−評者・清水徹
保坂正康著『昭和陸軍の研究』上下(朝日新聞社)/黒沢文貴著『大戦間期の日本陸
軍』(みすず書房)−評者・山内昌之
吉永みち子著『性同一性障害』(集英社新書)−評者・杉浦日向子
ジェーン・グドールほか著『森の旅人』(角川書店)−評者・小西聖子
赤瀬川原平ほか著『日本美術応援団』(日経BP社)−評者・藤森照信
○読売新聞○
多田茂治著『石原吉郎「昭和」の旅』(作品社)−評者・道浦母都子
ツルティム・ケサンほか著『チベット密教』(ちくま新書)−評者・上田紀行
ジャック・デリダ著『法の力』(法政大学出版局)−評者・東浩紀
山折哲雄著『悪と往生』(中公新書)−評者・野矢茂樹
柳田邦男著『脳治療革命の朝』(文藝春秋)−評者・佐藤勝彦
石井米雄著『タイ近世史研究序説』(岩波書店)−評者・竹田いさみ
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▼今週のベストセラー ◇旭川冨貴堂本店(2000年3月26日〜4月1日)調べ◇
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1 大平光代著『だから、あなたも生きぬいて』(講談社)1400円
2 菊田まりこ著『いつでも会える』(学習研究社)950円
3 北川悦吏子著『ビューティフルライフ』(角川書店)1100円
4 乙武洋匡著『五体不満足』(講談社)1600円
5 なかむらみつる著『やさしいあくま』(幻冬舎)1400円
6 西荻弓絵著『ケイゾク/映画』(角川書店)1200円
7 菊田まりこ著『君のためにできるコト』(学習研究社)950円
8 西村京太郎著『下田情死行』(文藝春秋)800円
9 講談社インターナショナル編『これを英語で言えますか?』(講談社インターナシ
ョナル)1200円
10 赤川次郎著『幽霊指揮者』(文藝春秋)848円
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〔Colum:北海道の本と文化〕
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★北海道出版史稿 昭和・戦後篇1(出村 文理)
戦後占領期の札幌を中心とする北海道の出版ブーム
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周知のとおり戦後占領期の昭和21年から約4年間、札幌市を中心とする北海道は、
出版ブームを呈した。戦時中・終戦の全国的な出版事情によるものであった。個々の
出版社の出版物を明記をする前に、出版ブームとなった経緯・事情を紹介しよう。
1.東京の空襲と出版社の疎開
太平洋戦争下の昭和19年以降、米軍機による空襲により東京をはじめ本州の各都市
は破壊されていった。昭和20年3月10日の空襲は、東京を焦土と化した。全国の雑誌
・書籍の90%を刊行していた東京は、出版機能が停止状態となった。印刷会社及び本
州各地の製紙会社も戦災を受けた。雑誌類の多くは遅刊、発行停止となった。
かかる状況により、昭和20年5月からはがき及び収入印紙類の一部が札幌市で印刷
されるようになった。
全国の出版社の統制特殊法人であった日本出版会は、在京の大手出版社を全国各地
に疎開させることを検討した。前回、記したとおり在京の講談社(当時・大日本雄弁
會講談社)は自ら20年5月に札幌市に北海道出張所を設置した。
2.印刷用紙と出版の統制
印刷用紙は政府により昭和15年から26年6月まで統制物資となっていた。印刷用紙
・新聞用紙の生産は、樺太・北海道の製紙工場は生産を続けていたが、本州各地の製
紙会社が戦災を受けて生産量は極端に減少していた。戦時中は日本出版会が印刷用紙
の割当権限を持っていた。
終戦間近い昭和20年7月に地元の出版活動の印刷用紙の円滑を期するため、講談社
及び地元の北方出版社や各種団体により構成の日本出版会北海道支部が設立された。
また、商業出版物の流通機関は全国的に一元化されており、国策会社の日本出版配
給株式会社(当時、日本出版配給統制株式会社)が全てを行っていた。同社の北海道
出張所は昭和17年10月に設立されている。
戦時中の出版活動は出版物の刊行関係は日本出版会、販売・流通は日本出版配給株
式会社がそれぞれ規制・統制の役割をはたしていた。
3.敗戦と出版規制の解除
昭和20年8月15日のポツダム宣言受諾で終戦となった。政治・経済は混乱し、特に
食糧不足は続いていたが、戦時体制による規制・統制が長く続いていたため国民の活
字文化への渇望感はピークに達していた。
占領軍であった連合軍最高司令部(GHQ)は、日本政府による規制・統制を解除
して行った。言論の自由関係については、20年9月に連合軍最高司令部は「言論およ
び新聞の自由に関する覚書」を発し、報道と日本政府による戦時体制下の出版規制は
解除となった。出版規制の解除と国民の活字文化への希求を受けて、出版は全国的な
ブームとなった。
連合軍最高司令部に解散を命じられた日本出版会は財団法人・日本出版協会となっ
た。これにより日本出版会北海道支部も日本出版協会北海道支部となった。また、日
本出版配給株式会社(当時、日本出版配給統制株式会社)は商事会社となったが、唯
一の流通取り次ぎ会社であった。
4・占領期北海道の出版ブーム
昭和21年の新聞用紙・印刷用紙の生産量は、昭和16年当時の7分の1まで落ち込ん
でいた。パルプ生産の45%を生産していたの樺太を失ったが、戦災被害が最小限であ
った苫小牧・釧路・旭川等の北海道内の製紙工場は操業を続けていた。
在京の出版社は印刷用紙の主要生産地であった北海道での印刷・刊行に着手した。
21年3月以降、筑摩書房、青磁社、創元社はじめ20数社が北海道に進出してきた。朝
日新聞社の『週刊朝日』、毎日新聞社の『サンデー毎日』も札幌市で印刷を開始した。
また道内の新興出版社が多数設立され、活発な出版活動を開始した。札幌市を中心
とする北海道は東京・大阪に次ぐ全国的な出版地となった。
日本出版協会北海道支部は道内における印刷用紙の割当査定権を有しており、配給
統制の印刷用紙を優先して受けるためには、同協会北海道支部に加入することが必要
があった。21年には同支部に28社(団体等を含む)、22年に107社、23年には125社が
加入している。
占領期北海道の出版ブームにおいて、札幌市を中心する北海道で刊行の文芸書・教
養書は<札幌版>と呼称されている。<札幌版>の文芸書・教養書と科学書は全国で
販売された。札幌市内の印刷所はその印刷に応える技術と設備を有しており、出版ブ
ームは道内の印刷会社に短期間ではあるが好景気をもたらした。また多数の作家・画
家・編集者が疎開していた。
昭和22年からは全国の義務教育の教科書印刷が札幌市内の印刷会社で開始された。
札幌市を中心とする北海道で出版ブームが起きる背景には、出版活動のためのソフト
ウエア(人材)・ハードウエア(印刷用紙・印刷会社)両面で、条件が満たされてい
たことも見逃がせない。
5 占領軍による検閲
連合軍最高司令部は占領まもなくから、ラジオ・新聞・映画・出版物のメディア関
係の検閲を行った。実施機関は連合軍最高司令部・民間諜報局民間検閲支隊(CCD)
であった。検閲は昭和20年10月から同24年10月まで実施された。
連合軍最高司令部は日本政府に各種指令・書簡を発し、それを受けて政府による行
政が行われていたが、メディア関係の検閲についてのみ連合軍最高司令部が直接関与
した。検閲の対象となった出版物はアメリカ・メリーランド州立大学図書館内のプラ
ンゲ文庫に所蔵されている。また札幌市を中心とする北海道内で刊行の出版物の多く
が、北海道立図書館代田文庫として所蔵されている。
☆出村文理(でむら・ふみただ)氏は北海道書誌研究者。敗戦後、札幌や小樽に移っ
てきた出版社の活動や作家たちの動向をまとめた『思いがけないルネサンス』(市立
小樽文学館)など戦後占領期北海道出版ブームの書籍・出版に関する著作がある。
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